久々の爆クラは、6月18日にアンドロイド・オペラ『MIRROR』の凱旋公演ほかガ行われる渋谷慶一郎さんをゲストに迎えて、クラシック音楽に存在するロボット的なものを追求していきます。
ロボット的って何? この言葉からは、たくさんのイメージが脳内に去来します。科学技術の進歩、未来の労働力、人工知能、機械人形、アイボ(懐かしい)、クラフトワークの「The robots」東洋初めてのロボット學天則、人格ならぬロボット格はあるの?! ちょっと前まで、のほほんとしていた我々人間も、リアルに居酒屋で料理を運ぶロボットや、Chat GPTが完全に仕事ライフに導入されてきている今、ロボットが普通にいる日常について思考停止ではいられなくなりました。
思えば、この急激な変化が意識されてきたのは、コロナの停滞が開けた後。渋谷さんが初音ミク主演による人間不在のボーカロイド・オペラ『THE END』をパリ・シャトレ座で公演したのは2013年。2018年にはAIを搭載した人型アンドロイドがオーケストラを指揮しながら歌うアンドロイド・オペラ『Scary Beauty』を発表していますが、当時と今回が決定的に違うのは、まさに社会の空気と私たちの感性なのです。
オーケストラや声明の前で、タクトを振る、渋谷オペラでの象徴的存在、新生アンドロイド・オルタ4。音楽に合わせて独特のムーブメントを示し、その姿が人間でないからこそ、私たちの感情に強烈に作用してくる関係性は、文楽の魅力にも通じてくる。
機械仕掛けの自動人形が登場するオペラで有名なのは、オッフェンバックの『ホフマン物語』。歌を披露する自動人形オランピアを人間の女と思い恋に落ちる。というストーリーは、もしも、新演出が施されるならば、ラブドールでやっていただきたいという内容。
ストラヴィンスキーのバレエ音楽『ペトルーシュカ』の、おがくずからつくられた人形・ベトリューシュカはおよそ人間の通常とは違う歪んだ身体軸でもって動き、その異形が私たちを魅了していきます。
今回の爆クラでは、AIは音楽・アートに何をもたらすのか、という今、ちまたで大いに語られている問題とともに、アンドロイドを人形というフィギュアにまで拡大し、クラシック音楽や文化の中でどういった強度と存在感を放っているのかを考えていきます。
何と言っても西欧文化で誕生したクラシック音楽は、人間中心主義。キリスト教の神がいれば、そこに人間がいる。そして、人間は意思が会ってナンボ。脳死や臓器移植、尊厳死に対する意識が我々日本人と異なるように、ロボットやAIがハイカルチャーに関わることに、非常に抵抗があるだろう事は、容易に予測できる話。しかし、渋谷さんの試みはヨーロッパで大人気でありもそのあたりの話にも乞うご期待
■ゲスト:渋谷慶一郎(しぶやけいいちろう)
音楽家。1973年東京生まれ、東京藝術大学作曲科卒業。
2002年に音楽レーベル ATAKを設立。作品は先鋭的な電子音楽作品からピアノソロ 、オペラ、映画音楽、サウンド・インスタレーションまで多岐にわたり、東京・パリを拠点に活動を行う。2012年に初音ミク主演による人間不在のボーカロイド・オペラ『THE END』を発表。初音ミクの衣装は当時Louis VuittonのデザイナーであったMarc Jacobsが務め、同作品はパリ・シャトレ座公演を皮切りにヨーロッパ中心に世界中で公演が行なわれている。2018年にはAIを搭載した人型アンドロイドがオーケストラを指揮しながら歌うアンドロイド・オペラ®︎『Scary Beauty』を発表、日本、ヨーロッパ、中東圏で公演を行なう。2021年は新国立劇場の委嘱新制作にてオペラ作品『Super Angels スーパーエンジェル』の作曲を務め、アンドロイドとオペラ歌手、合唱、バレエダンサー、そして東京フィルハーモニー交響楽団と共演を果たした。2022年3月にはドバイ国際博覧会にてアンドロイドと仏教音楽・声明、UAE現地のオーケストラのコラボレーションによる新作アンドロイド・オペラ®︎『MIRROR』を発表。2023年6月にはパリ・シャトレ座にて70分の完全版となる同作を初演。今月18日には東京にて凱旋公演が決定している。また数多くの映画音楽も手掛けており、2020年には草彅剛主演映画「ミッドナイトスワン」(内田英治監督)の音楽を担当。本作で第75回毎日映画コンクール音楽賞、第30回日本映画批評家大賞、映画音楽賞を受賞した。2022年には映画「xxxHOLiC」(蜷川実花監督)の音楽を担当。2022年にはGUCCIのショートフィルム「KAGUYA BY GUCCI」の音楽を担当し、自身もアンドロイドと一緒に映像に出演している。2022年に大阪芸術大学の客員教授に就任、アンドロイドと音楽を科学するラボラトリー「Android and Music Science Laboratory (AMSL)」を設立。テクノロジー、生と死の境界領域を、作品を通して問いかけている。
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