2025年の開催を目指して、大阪府が再び万博の開催地たるべく立候補することを決定しました。東京オリンピックと同様、カネを廻し、ニッポンを元気にするための「馬ニンジン」ということなのでしょう。とはいえ、この私、1970年の大阪万博を親に連れられて見にいって、その後の自らのセンスを決定する多大なインパクトを受けたので、オリンピックよりも実は相当、心が騒いでいるのです。
というわけで、今回のテーマは「万国博覧会とクラシック」。前回「シン・ゴジラなクラシック」にて、さんざっぱら伊福部昭を取り上げたことから、派生してきたこの切り口。
そう、前回の大阪万博は、折しも現代音楽がエレクトロ・サウンドと出会い、刺激的な作品が矢継ぎ早に発表された時代と重なり、各企業のパピリオンは、現代音楽作家の新作てんこもり状態。伊福部昭はもとより、武満徹に黛敏郎、シュトックハウゼンという現代音楽の大物が楽曲を提供し、とんでもないことになっていたのでした。
時代の最先端の科学技術や文化スタイルが披露される万博は、歴史上多くの刺激をアーティストに与えてきたことは周知の事実です。(パリ万博に出品された浮世絵が印象派に多大な影響を与えたのは有名な話)ガムラン音楽にドビュッシーが出会ったのも万博だったというのも、これまた有名な話。
そして、何と言っても1970年の大阪万博。鉄鋼館は武満徹、みどり館は黛敏郎、シン・ゴジラで熱くオマージュされた伊福部昭は三菱未来館。西ドイツ館はもちろん、シュトックハウゼン、アメリカ館はワルター・カーロスがバッハを電子音楽化した「スイッチ・ト・オン・バッハ」と、もうもう笑っちゃうほどのラインナップ。
これらの音響を万博におしかけた、ニッポンの大衆が知らず知らずのうちに体験しちゃっているのだから、万博というものは、本当に文化のチャンスミーティングとしては大変に面白いのですよ。
ゲストは、バート・バカラックから、伊福部昭までその博覧強記ぶりに、わたくしがいつも感銘を受けている音楽ライターの早川優さん。(最近では「シン・ゴジラ」のサントラに音楽解説で登場されていましたよ!)
大阪万博だけではなく、沖縄海洋博、つくば科学博、愛・地球博、上海万博、ミラノ博での猛烈に面白い、音楽の試みなども併せて紹介していきます。
ゲスト
早川優(はやかわまさる、ライター・映像音楽研究)
1965年3月31日、埼玉県川越市出身。 特撮映画・アニメーション等のサウンドトラックCD、各種映像ソフトの企画・構成・執筆を中心に活動。企画・構成を手がけた音楽商品は100タイトルほど。愛好家向けムック等への寄稿も行なう。企画CDの最新作に「ウルトラQ ウルトラマン 快獣ブースカ 宮内国郎の世界」「冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集」(共に日本コロムビア)など。現在、1994年度の日本レコード大賞で企画賞を頂戴した10枚組CD『怪獣王〜日本SF・幻想映画音楽体系〜』のリニューアル再発企画を準備中。
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