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爆クラ<第63夜>「加藤浩子の2017年欧州オペラコンフィデンシャル 〜現場で今、何が起こっているのか?!」ゲスト:加藤浩子


 この夏、私のクラシック音楽観を数百倍アップデートさせたザルツプルグ音楽祭でのオペラ体験。それは「オペラはもうこんな先端を走っているのか?!」という驚きでした。伝統の永続には、時代性と呼応した破壊と創造が不可欠ですが、それを歌舞伎の最近の方向性でもある「お客の嗜好に合わせた商業的マーケティング」とは違うエネルギーで行なっている、パンクなその現場に仰天。


 クラシックやオペラは基本再現芸術ですが、もう、再創造、の次元。ゲストには、日本で一番ヨーロッパのコンサートを観て、そして的確な講評を発表し続けている、加藤浩子さん。


 彼女によると、現在のオペラ状況を語るに重要なキーワードは、「古楽」と「演出」。そう、この夏私及び加藤さんを唸らせた、ザルツブルク音楽祭のモーツァルト作クルレンティスが振るところの「皇帝ディート」ですが、もう、開幕のオペラ公演を、ウィーンフィルではなく、古楽器のオーケストラ「ムジカエテルナ」が担うという時代なのですよ。


 「歌」についても、古楽唱法というか、ヴィヴラートを抑えて、当時の演奏慣習を取り入れて即興や装飾をするスタイルが今のトレンド。ベッリーニ「ノルマ」(1830年のオペラ)のアリアを、1950年代のマリア・カラスと21世紀のチェチーリア・バルトリ で聴き比べたりもいたします。


 演出面では、当時の設定をいかに、現代のあるあるに持っていけるかどうか、つまり「読み変え」ができるかどうか、がクリエイションのポイント。 たとえば、世間を騒がせた松居一代の件なんぞは、性別入れ替えたら「オテロ」そのまんまなわけで。そういう、古典をビビッドに現代に蘇らせる演出の数々を紹介していきます。


 今やオペラは、歴史的衣装をつけた太った歌手が棒立ちで歌うコスチュームプレイではなくて、俳優顔負けの美男美女が駆け回ったり寝そべったりしながら歌っちゃう刺激的な出し物。17世紀のスペインの伝説的プレイボーイが、NYのハーレムでヤクを打っていた り、地獄へ落ちたはずがよみがえったりもいたします。


 ここ半世紀で、ザルツブルク音楽祭のモーツアルト・オペラがどれほど変わったかにも加藤さん、大言及。この数年、1970年代生まれの若い指揮者が続々、欧米を代表する歌劇場やオーケストラの音楽監督、常任指揮者に起用されていますが、そのあたり、実際に「現場を聴いてきた」加藤さんにとことん聞いていきます。


 ちょうど、「爆クラ」出演日の直前に、現パリ・オペラ座の音楽監督で、次期ウィーン国立歌劇場の音楽監督に内定したフィリップ・ジョルダンの「ドン・カルロス」(新制作)を観劇するとのこと、ホットな話題をお楽しみに。


 教養としてのクラシック音楽ではなく、電子音楽の響きを経たクラブ耳を持つ人にこそ体験してほしい、この爆音音浴。生演奏がデフォルトだけれど、録音とオーディオという現代のテクノが入ってこその、音と脳と身体とのセッションを堪能して下さい。


 今回は映像もがんがんお見せしますよ。  ご来場をお待ちしています。



ゲスト

加藤浩子

音楽物書き。東京生まれ。慶應大学美学美術史学科卒業。同大学院文学研究科博士課程満期退学(音楽学)。大学院在学中、オーストリア政府給費留学生としてオーストリア、インスブルック大学留学。執筆、講演、欧米へのオペラ、音楽ツアーの企画同行と幅広く活動。著作に『今夜はオペラ!』(春秋社)、『バッハへの旅』(東京書籍)、『オペラでわかるヨーロッパ史』『ヴェルディ オペラ変革者の素顔と作品』『音楽で楽しむ名画』(平凡社新書)等。

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