クラシック音楽ジャンルで最大の謎が指揮者という存在です。つまり、指揮そのものがミステリー。4時間以上も鳴り続ける音楽に関して、自分では音を出さずに全てを演奏者にゆだねつつコントロールし、楽曲に込められている“境地”に観客を連れて行くという手腕は、まるで魔法のよう。
今回、ゲストにお呼びする原田慶太楼さんは、この4月に東京交響楽団正指揮者に就任したばかりの、クラシック界大注目の若手指揮者。「日本に生まれた日本人で、日本の音楽教育とは無縁のままアメリカで勉強した後に、キャリアを重ねてきています。そして、私は2018年にブルガリアで彼が指揮、台本を自ら書き下ろす等構成にも大きく関わった『カルメン』を現地で見て、その「明るい暴力性」といった原曲の持つ魅力の引き出し方と、現地のスタッフとの濃密な信頼関係に心を動かされました。
指揮者はいわゆる名ミキサーで、彼らが音のバランスを卓のつまみで制御するように指示を出していくのだ、という理解の仕方も出来ますが、そういう具体的なノウハウを超えたところが指揮者の勝負ドコロ。そもそも、指揮者がオケに意思を伝えるのは言語。技術的な指示以上の、感性的なもの、センスはどういう風に言い回し、どういう身体的コミュニケーションを取るのか? そして、オケのメンバーが指揮者の表現を“察して”くれるようになる(ここがまさに魔法なのです)ためには何が必要なのか? などは、指揮者それぞれがオリジナルなのです。
今回は『カルメン』を始めとして、NHK交響楽団と演奏した、今年生誕100年を迎えるピアソラの『タンガーソ』(ブエノスアイレス変奏曲)、そして、ベートーヴェンや最近では、クルレンティスが印象的な響きを紡ぎ出したマーラーの交響曲第6番、ベートーヴェン、ブラームスもろもろの楽曲を下敷きに、「オレだったらこうするね!」という原田慶太楼流を披露していただきます。
偉大な指揮者になるには、脅すか、愛されるかの方法があり、また、指揮者のタイプとしては「優れた知識人」もしくは「若々しい熱き先達者」があると言われています。無論原田さんは後者の代表格だと思いますが、実は前者の“毒”との両刀遣いとも考えられる。そのあたりも追求する所存。
なお恒例、トークアフターのDJは、原田慶太楼さんが挑戦いたします。期待!!!
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■ゲスト:原田慶太楼(はらだけいたろう)
日本とアメリカを中心に目覚ましい活躍を続けている期待の俊英。
シンシナティ交響楽団およびシンシナティ・ポップスのアソシエイトコンダクターとして4シーズンを終え、2020年からアメリカジョージア州サヴァンナ・フィルハーモニックの音楽芸術監督、2021年4月からは東京交響楽団の正指揮者に就任した。
これまでに、ヒューストン、シアトル、ハワイ、インディアナポリス、メンフィス、ノースカロライナ、フェニックス、バージニア等のオーケストラと共演。国内ではNHK交響楽団、読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団をはじめ様々なオーケストラと共演。
2013年ブルーノ・ワルター指揮者プレビュー賞、2014・15・16・20年米国ショルティ財団キャリア支援賞を受賞。2016年と2018年には、ワレリー・ゲルギエフに招かれパシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)に於いてオープニング・コンサートを指揮。
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